一般財団法人日本情報経済社会推進協会

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12.海上運送業

運輸省告示第三百九十四号
情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第三条の二第一項の規定に基づき、国際海上貨物輸送の分野において海上運送事業者、港湾運送事業者、倉庫業者、貨物運送取扱事業者(以下「海上運送事業者等」という。)が行う電子計算機の連携利用に関する指針を定めたので、次のとおり告示する。
平成七年六月二十七日
運輸大臣 亀井 静香

国際海上貨物輸送の分野において海上運送事業者等が行う電子計算機の連携利用に関する指針

我が国の国際貿易量は産業の発展とともに高い伸びを示し、これに伴い我が国外航海運は着実な進歩を遂げてきた。コンテナリゼーション、高速輸送手段の出現等により、国際海上貨物輸送は飛躍的に効率化が図られてきたが、一方で、貿易、取引関係書類の作成業務が煩雑化してきており、こうした業務処理の迅速化への要請が高まっている。また、昨今の技術革新により、コンピュータの価格低下、ダウンサイジング等が急速に進展してきたことも追い風となって、これまで、各事業者においてはコンピュータを利用した情報処理を積極的に進め、企業間オンラインシステムを構築すること等により業務の効率化が図られてきた。
しかしながら、個々の事業者ごとに独自のプロトコルによる企業間オンラインシステムの構築が進められると、各システムの互換性の欠如により、取引相手側における複数の端末機の設置等による重複投資、重複入力等の問題が生じるおそれがある。
こうした問題を解決するための手段として、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)の導入が重要度を増してきている。EDIは、「異なる企業間で、取引に関する情報を広く合意された規約に基づきコンピュータを介して交換すること」であり、「広く合意された規約」(EDI標準)の採用により、同業種間のみならず、異業種間の企業においても効率的な情報交換が行われるというメリットがある。
国際海上貨物輸送は、海外企業との情報交換が不可欠であり、現在、国連において国際標準UN/EDIFACTの開発・普及が積極的に行われていること等を勘案すると、国際的に汎用性のある標準を採用したオンライン情報交換システムへの早期移行が望まれるところである。
こうした観点から、平成4年6月(財)物流技術情報センターを事務局とする物流EDI研究会が設置され、国際標準UN/EDIFACTに準拠した電子的帳票(メッセージ)の開発、共同利用型情報ネットワークの構築等について、積極的な検討が行われてきたが、ビジネスプロトコルの標準化等については、今後とも体制を整備しつつ精力的に検討を行っていくことが重要であるとの認識がなされている。
国際海上貨物輸送に携わる海上運送事業者、港湾運送事業者が中心となって、各事業者の業務の効率化を図るため、共同利用型のオンライン情報交換システム(SHIPNETS)の構築が進められてきたが、未だ参加者が不十分である等の問題を抱えており、各事業者において十分な業務の効率化が進められているとはいえない現状にある。
今後、こうした課題に対応しつつ、海上運送事業者等の間で連携したコンピュータの効率的かつ高度な利用を実現することは、国際海上貨物輸送の分野における事業の一層の高度化のための基盤を提供するものであり、我が国経済の発展及び国民生活の向上にも大きく資するものである。
この指針は、以上の認識に基づき、国際海上貨物輸送の分野において海上運送事業者等がコンピュータを効率的に利用し、企業経営の一層の効率化を図るため、電子計算機利用高度化計画を勘案し、事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様、その実施の方法及びその実施に当たって配慮すべき事項を示すものである。

一 事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様

(一)帳票、データ交換フォーマット、そこに記載される項目、コードなどのビジネスプロトコル等を標準化し、これを用いた「企業間オンライン方式」による各事業者間における取引情報交換システム
(二)標準化されたビジネスプロトコル等により、各事業者間における取引情報の交換を効率的に行い、かつ、情報の体系的な収集、整備並びにその共同利用を図るため、各事業者が緊密な連携をとりつつ構築する業界共同利用型ネットワークシステム

二 実施の方法

(一)標準ビジネスプロトコルの積極型利用

以下に掲げるビジネスプロトコルについては、電子データ交換(EDI)の国際的な普及の進展に留意し、UN/EDIFACTを採用するよう努めること。また、現在、既に電子的にデータ交換を行っている取引データに関するビジネスプロトコルについては、システム更新の機会等をとらえ、順次UN/EDIFACTへの移行を図るよう努めること。

(1)シンタックスルール

EDIで実際に取引データを交換する場合の構文規則

(2)データエレメントディレクトリー

取引データの交換に使われるすべてのデータ項目に関して、その名称、属性、内容、桁数等を定めた定義集

(3)標準メッセージ

取引データの交換に使われるデータ項目を網羅した電子的帳票

(二)EDIを前提とした業務モデルの確立

EDIを導入した企業が、EDIのメリットを十分に享受するためには、従来の帳票の交換を基本とした業務から脱皮し、EDIの導入を前提とした効率的な業務体系を構築する必要がある。このため、国際的な動きとも十分調整しつつ、EDIによる業務を最大限に活かすことのできる業務モデルを確立するよう努めること。

(三)標準メッセージ(UN/EDIFACT)の利用マニュアルの作成等

上記業務モデル中の各業務単位及び各事業者間で交換される情報の定義を行い、必要な情報項目等を検討することにより、標準メッセージ(UN/EDIFACT)の利用マニュアル(サブセット及びユーザマニュアル)の作成、保守管理を行うこと。

(四)実施体制の整備

各事業分野において、EDIの適用を前提とした業務モデルの確立、標準メッセージの利用マニュアルの作成・保守管理を行うとともに、EDI及びUN/EDIFACTの普及等を行うためのEDI推進組織を整備するよう努めること。また、港湾物流情報システム協会は、各事業分野における検討又は各事業分野間の調整に積極的に参画すること。

(五)情報伝達規約の整備

各種の情報をオンライン交換するために、OSI(開放型システム間相互接続)導入の動き等を十分踏まえつつ、最適な伝送手順を業界標準として設定し、その普及に努めること。

(六)業務運用規約の整備

オンライン取引開始に伴う帳票、オンライン併用型のデータ交換による運用の複雑化、各社固有のルールによる運用の煩雑化及び各種トラブル等を防止し、省力化を図るため、標準的業務運用規約を確立するよう努めること。

(七)

情報の拡充取引業務の一層の効率化を図るため、オンラインで交換する情報の種類を拡充し、情報交換システムの機能の充実に努めること。

(八)参加者の拡大

海上運送事業者等が連携して行う電子計算機の利用価値を高めるとともに、全体としての費用対効果の一層の改善を図るため、オンラインデータ交換を行う対象事業者の参加を拡大すること。

三 実施に当たって配慮すべき事項

(一)中小企業への配慮

国際海上貨物輸送には、大規模事業者から小規模事業者まで様々な規模の事業者が携わっており、各事業者が有する電子計算機システム、資金的能力、人的能力にはかなりの差異がある。従って、ビジネスプロトコルの標準化等に際しては、中小規模の事業者に過大な負担を与えることのないよう十分配慮すること。

(二)セキュリティの確保

企業間システムのオンライン化及び業界共同のネットワークシステムの確立等により、システムダウンや不正介入等の危険にさらされる可能性及びその影響の及ぶ範囲が増大する可能性がある。これらに対処するため、安全性、信頼性の高いコンピュータの導入及び利用環境の整備等セキュリティの確保を図ること。

(三)他業界への配慮

海上運送事業等は、多くの荷主業界等と取引関係を有していることから、電子計算機の連携利用は、単に当該業界のみならず、取引関係のある他業界まで広く波及する可能性が大きいことに留意しつつ、その基盤となる標準化を進めるとともに、当該標準については、これを積極的に公開することにより、その普及に努めること。

(四)マンマシンインターフェイスの向上

オンライン取引を行う海上運送事業者等の増大に対応して、検索や加工が容易に行えるよう操作性を確保する等マンマシンインターフェイスの向上に努めること。