一般財団法人日本情報経済社会推進協会

ナビゲーションをスキップ

EN

お問い合わせ

10.建設業

建設省告示第二千百一号
情報処理の促進に関する法律(昭和四十五年法律第九十号)第三条の二第一項の規定に基づき、建設業における電子計算機の連携利用に関する指針を定めたので、次のとおり告示する。
平成三年十二月二十一日
建設大臣 山崎 拓

建設業における電子計算機の連携利用に関する指針

我が国建設業は、これまでそれぞれの事業者において、電子計算機の利用による情報処理を進め、業務の効率化を図ってきた。その結果、大規模な事業者においては、経理、財務管理等の業務について電子計算機の利用が進んでおり、さらに、建設工事の受発注、施工管理等の業務についても電子計算機の利用が進んでいるところである。また、中小規模の事業者においても、近年の情報機器の低コスト化、ソフトウェアの流通量の飛躍的増大、取引先関連企業の情報化の進展等に伴い、情報処理に関する電子計算機の利用が積極的に進められている。
一方、個々の企業ごとに独自の企業間オンラインシステムの構築が進められると、各システムの互換性の欠如により、取引相手側における複数の端末機の設置による重複投資、事務処理の複雑化等の問題が生じるおそれがある。建設業における生産システムは、総合工事業者、専門工事業者等の分業関係により形成されているものであることから、今後は個々の企業内にとどまらず、業界全体を網羅する情報処理システムの構築を進めていくことが重要である。
こうした観点から、(財)建設経済研究所に設置された建設産業情報ネットワーク(CI-NET)研究会において、情報ネットワークの構築、利用及び普及について検討を行い、その結果、企業間の情報交換のオンライン化の前提となるビジネスプロトコル及び伝送手順の標準化等様々な課題が明らかになったところであり、これを受けて(財)建設業振興基金を事務局とする建設産業情報ネットワーク(CI-NET)推進協議会において検討が行われているところである。
今後、これらの課題を克服しつつ、事業者間で連携した電子計算機の効率的かつ高度な利用を実現することは、建設業全体の一層の高度化のための基盤を提供するものであるとともに、建設関連産業全体の健全な発展に資するものである。
この指針は、以上の認識に基づき、建設業における電子計算機の効率的利用を図るため、電子計算機利用高度化計画を勘案し、事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様、その実施の方法及びその実施に当たって配慮すべき事項を示すものである。

一 事業者が連携して行う電子計算機の利用の態様

メッセージフォーマット、当該フォーマットに記載される項目コード等のビジネスプロトコル及び伝送手順を標準化し、これを用いた「磁気媒体(磁気テープ等)交換方式」又は「企業間オンライン方式(個別企業間交換方式又は蓄積交換方式)」による総合工事業者、専門工事業者等の間の取引データ交換システム

二 実施の方法

(一)ビジネスプロトコルの標準化とその積極的採用

次に掲げるビジネスプロトコルについて標準化を検討し、その有効性につき業界内での合意形成を図り、現行処理との整合性に配慮しつつ、発注から決済に至るオンラインデータ交換の実現に努めること。
特に、各事業者においては、外部接続インターフェイスに、業界標準ビジネスプロトコルを積極的に採用するよう努めること。

  1. 取引データの交換に使われるすべてのデータ項目に関して、名称、内容、けた数、属性等を定めた定義集(データエレメントディレクトリー)及びデータコード表
  2. 取引データの交換に使われるデータ項目のうち、見積り、注文、請求、支払等の業務単位ごとに交換されるデータ項目のリスト(標準メッセージ)
  3. 標準メッセージから必要な項目だけを抜き出して、実際に交換するメッセージを組み立てるための構文規則(シンタックスルール)

(二)業界推奨伝送手順の設定

各種の情報をオンライン交換するために、OSI(開放型システム間相互接続)導入の動きを十分踏まえつつ、建設業に最適な伝送手順を業界標準として設定し、その普及に努めること。

(三)オンライン取引に対応した標準的業務運用規約の確立

オンライン取引開始に伴う帳票、オンライン併用のデータ交換による運用の複雑化、各社別固有ルールによる運用の繁雑化及び各種トラブル等を防止し、省力化を図るため、標準的業務運用規約を確立するよう努めること。

(四)実施体制の整備

以上の各項目を実施するため、(財)建設業振興基金を中心に建設業界としての実施体制を整備し、電子計算機の連携利用の効率的促進に努めること。

三 実施に当たって配慮すべき事項

(一)中小企業への配慮

建設業は、大規模な事業者から小規模の事業者まで様々な規模の事業者から構成されており、各事業者が有する電子計算機システム、資金的能力、人的能力等にはかなりの差異がある。したがって、ビジネスプロトコルの標準化、企業間システムのオンライン化等に際して、中小規模の事業者の負担が過大にならないよう十分配慮すること。

(二)セキュリティの確保

企業間システムのオンライン化等により、システムダウン、不正介入等の危険にさらされる可能性やその影響の及ぶ範囲が増大する可能性がある。これらに対処するため、安全性、信頼性の高い電子計算機システムの設置や運用面での配慮等セキュリティの確保を図ること。

(三)他業界への配慮

建設業は、取引を通じて関係する業界が多岐にわたっている。したがって、建設業における電子計算機の連携利用は、単に建設業界内にとどまらず、取引関係にある他の業界にまでも波及する可能性が大きいことを十分に考慮しつつ、その基盤となる業界標準化を進めること。

(四)業界標準ビジネスプロトコルの公開

関連規約を含む建設業の業界標準ビジネスプロトコルは、建設業界内にとどまらず、産業界全体の資産となることが望ましい。したがって、その内容は、積極的に公開されるべきである。このため、業界として必要に応じて説明会等を実施し、広く普及に努めること。