一般財団法人日本情報経済社会推進協会

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2020.12.18

レポート

電子契約の過去・現在・未来-書面・押印・対面の見直しのための技術と法」シンポジウムでの講演

2020年12月18日、公益財団法人 日弁連法務研究財団・第一東京弁護士会総合法律研究所IT法研究部会共催のシンポジウム「電子契約の過去・現在・未来-書面・押印・対面の見直しのための技術と法」では、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)常務理事の山内徹が「電子契約サービスの現状とそれを支えるトラスト基盤について」というテーマで講演を行いました。

※このページの下部に講演資料のPDFを掲載しています。

講演内容

電子契約の進展

2000年に電子署名法、電子帳簿保存法などのIT関連法が整備されました。そこで公共調達、公共入札等での電子署名(認定認証業務の電子証明書)が活用されるようになり、建設工事の請負契約での電子契約が広まりました。
2014年から「電子契約元年」プロジェクトが始動し、クラウド型の電子契約サービスが登場し始め、IT、金融業、不動産業等の分野での採用が広がり始めました。
2020年に新型コロナウイルスを契機としたニーズが顕在化し、テレワークの阻害要因としての押印の廃止や電子署名を巡る当事者型と事業者型の議論が始まりました。

電子契約の利用状況

JIPDECと(株)アイ・ティ・アールが2020年7⽉に発表した「企業IT利活⽤動向追跡調査2020」で電子契約の利用状況を公表しています。過去3年を見ると、着実に採用・検討が進んでいます。半年前とも比較してみたところ、採用を検討している企業も半年で増えています。
 また、他社の調査では、2019年の電子契約サービスの市場規模は前年比74.4%増の68億円、2020年は100億円超の市場へ成長とも発表されていました。

電子契約サービスの普及と課題

新型コロナウイルス感染症対策として、国からテレワークの積極導入が要請された結果、社内手続きの電子化が進むとともに、他社との取引文書を電子化する電子契約サービスが急速に普及しました。これは紙文書と押印を省略するだけではなく、時間や場所の制限を大幅に緩和し、働き方改革に資するとともに、各種データの更なる活用を実現できます。
 一方で、課題として利用者の本人確認の方法やなりすまし等が危惧されています。

クラウド型の電子契約サービスの登場

電子的に作成された契約書はクラウドサービスにて作成・保管され、電子署名はリモートでなされる。契約書の原本は、どれでどこにあるのかというのが疑問です。

電子契約サービスの類型

電子契約サービスは3つに分類できます。当事者型のローカル型(1)、当事者型のクラウド型(2)、事業者型のクラウド型(3)です。
 当事者型の(1)と(2)は署名鍵の名義は契約当事者である甲乙になり、事業者型の(3)はサービス提供事業者になります。電子証明書及び署名鍵の格納場所はローカル型の(1)は契約当事者のパソコンやICカードになりますが、クラウド型の(2)と(3)はクラウド上になります。電子署名は(1)が契約当事者がパソコン上で行い、(2)は契約当事者がサービス提供事業者のクラウド上、(3)は契約当事者の指示のもとで、サービス提供事業者がクラウド上で行います。(2)と(3)については、サービス提供事業者が業務委託しているリモート署名事業者のサーバーで行われる場合もあります。普及状況については、(1)についてはあまり見当たりません。(2)は2013年頃から普及しており、(3)は近年急速に普及しています。

電子契約サービスの信頼性の確保

政府は、令和2年(2020年)7月17日付で、総務省、法務省及び経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」を公表しました。それによると、「電子契約サービスにおける利用者の本人確認の方法やなりすまし等の防御レベルなどは様々であることから、各サービスの利用に当たっては、当該サービスを利用して締結する契約等の性質や、利用者間で必要とする本人確認レベルに応じて、適切なサービスを選択することが適当と考えられる。」と書かれています。

電子署名法の概要

2001年4月1日に施行された電子署名法の主務大臣は総務省、法務省、経済産業省になります。第2条にそれぞれの用語を定義し、そこに特定認証業務も定義されています。特定認証業務の認定に関しては第4条以降に規定されています。なお、第3条に民事訴訟法第228条第4項の「文書の真正な成立の推定」と類似の規定があります。

特定認証業務とは何か?

紙文書への押印に使われる印鑑の登録に類似したサービスにあたります。
地方公共団体の事務で印鑑登録証明書の発行を行っていますが、これは印影と本人を紐づけるものです。この印影のもととなる印鑑を契約書等に利用します。特定認証業務では、電子署名と本人を紐づけます。

国による特定認証業務の認定

国による認定に先立って、指定調査機関であるJIPDECが特定認証業務を調査しています。
具体的には認定認証事業者あるいは認定を希望する事業者が特定認証業務についてそれぞれ主務3省に認定の申請を、指定調査機関に調査の申請を、それぞれ行い、申請を受けた特定認証業務に対して指定調査機関が調査を行っています。

電子契約サービスと電子署名法の関係

電子署名法が定める特定認証業務の認定の範囲は、あくまで認証局から電子証明書を発行するまでの部分です。クラウドサービスで電子証明書の管理や電子署名を行うことについては、電子署名法の現行の技術基準では想定外です。
これは、電子署名法は施行以来技術基準に関する抜本的な見直しが行われていないためです。電子署名をどのように具体的に実施するかについての方法論に関する技術基準は無く、電子署名のための署名鍵は、電子署名を行う者の手元にあり、ローカルのパソコンから使用する前提となっています。 

電子署名等に係るトラストサービス

電子文書等の真正性の証明を行うことができるのが電子署名で、通信の相手の証明を行うのが電子認証です。これがトラストサービスにあたります。
電子署名は電子文書の真正性確保や改ざん等の防止に、電子認証は電子契約サービス等の利用者の本人確認やなりすまし等の防御に用いられます。
電子署名や電子認証に関連するサービスに加えて、それらを用いる電子契約サービス等もトラストサービスと位置付けられます。
電子署名や電子認証に用いられる電子証明書を発行する認証局は、基本的なトラストサービスです。電子証明書は、メールなりすまし対策にも利用することができます。
利用者が離れた場所にあるサーバーで電子署名を行える仕組みを提供するリモート署名のサービスも、近年、電子契約で活用も進んでおり急速に普及していま

トラストサービスの広がり

電子署名やeシールは認証局から発行されます。
デジタル庁創設の議論上で行政が保有する社会基盤データとしてベースレジストリという概念が注目されています。それらのデータを参照し、自然人の身元確認や法人の実在性確認、モノの確認を行うのが認証局になりますが、そのなかで自然人の身元確認をする認証局のみが電子署名法において対象になっています。
電子文書等における情報の信頼性(トラスト)を確保するために行われる電子署名等もトラストサービスの一部であり、人に留まらず法人等を対象にしたものに拡大しています。

トラストサービスに係るJIPDECの実績

JIPDECは、 電子署名法に基づく国からの指定を受けて、認証局の基準への適合に関する調査に携わり、我が国の電子署名の信頼性の確保と向上に貢献してきました。
最近はEUのトラストサービスに関するeIDAS規則及び欧州規格に対応した認証局の審査を行うことができる審査員資格を、国内では唯一ドイツの適合性評価機関TUViTから取得するなど、トラストサービスの評価に係る人材を育成しています。
また、日欧インターネットトラストシンポジウムを慶応義塾大学と共同で開催するなど、欧州等のトラストサービスの標準化活動の専門家を定期的に日本に招聘し、国際的な活動にも取り組んでいます。

トラストサービスの評価事業

JIPDECは、多様な電子文書等に係る情報の信頼性確保の仕組みを提供するトラストサービスを評価・登録し、対外的に公開しています。特に、電子契約サービスについては、利用者の方々が適切なサービスを選択するための信頼できる情報の提供に注力しています。

トラストサービスの評価を受けた事業者一覧

現時点でJIPDECがトラストサービスの評価を行っている事業者を紹介します(敬称略)。
認証局は、日鉄ソリューションズ、みずほ銀行です。
電子証明書取扱業務については、一条工務店、インタセクト・コミュニケーションズ、インフラウェア、FCF推進フォーラム、京都銀行、熊本銀行、コンストラクション・イーシー・ドットコム、埼玉りそな銀行、十八親和銀行、湘南建築センター、情報処理推進機構、新生銀行、住信SBIネット銀行、セイコーソリューションズ、生和コーポレーション、積水化学工業、仙台銀行、中部電力、日本EDD認証推進協議会、日本航空宇宙工業会、日本BPO、日本モーゲージサービス、ハウス・デポ・パートナーズ、パーソル、福岡銀行、富士建築センター、ペーパーロジック、防衛基盤整備協会、松本商工会議所、みずほ銀行、横浜銀行、りそな銀行になります。    
リモート署名(電子契約)はサイバートラストです。

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