一般財団法人日本情報経済社会推進協会

ナビゲーションをスキップ

EN

お問い合わせ

2017.01.24

レポート

経済産業省の平成29年度IT関連施策(2017年1月24日 第15回情報交流会)

経済産業省の平成29年度IT関連施策
経済産業省 商務情報政策局
情報政策課 政策企画委員
瀧島 勇樹 氏

印刷用

 現在、政府は、第四次産業革命やIT政策に注力している。今回は、日本を取り巻く第四次産業革命に関する動向や、経済産業省が平成29年度に取り組むIT施策の全体像についてご紹介する。

IoT、ビッグデータ、AIに関する動向

 米国では、90年代以降に生まれたIT企業がいわゆるプラットフォーマーとして大きな価値を生み出しているが、日本では企業の新陳代謝が進んでいない。プラットフォーマーたちが提供するサービスの上に他社の製品やサービスが乗ることで彼らのもとに膨大なデータが蓄積され、さらに競争力が増していく、というビジネスの広がりが、垂直的なビジネスを得意とする既存の日本企業の優位性を脅かしている。
 こうしたなか、「IoT化」「分散化」は日本にとって挽回のチャンスである。ものづくりを得意としてきた日本は、IoTにおける端末側の扱いに優位性がある。加えて、自動走行やロボット等の分野では、データセンターでの処理を挟まず端末側(エッジ側)やフォグ層でデータ処理・管理をすることが求められており、こうした点でも優位性が見込まれている。経済産業省では、これらに関連する技術や共通基盤構築のための研究開発に取り組んでいる。またこうした技術によるデータの取り扱いについては、欧州で議論されている「個人情報コントロール権」のように、データは誰のものなのか、どこまで使うのか・使わないのかといった概念の整理や、B to Bにおけるユーザー側・サービサー側のデータ利用権を明確にするなど、データ利活用のための環境整備も必要であるため、あわせて検討を進めているところである。
 「社会課題先進国」である日本においては、社会保障費の増大や少子高齢化など、日本が抱える課題や社会的ニーズに競争力の源泉があると考えられている。IoT・ビッグデータ・AIを利活用し、こうした社会課題をクリアしていくことで、将来的に、社会成長の先をいく日本のソリューションを海外に売り出していくことも可能だろう。経済産業省では、社会課題解決に向けた取組みの1つとして、IoT推進コンソーシアムの下に設けられた「IoT推進ラボ」において、IoTやAI等を用いた革新的な取り組みを創出する場を提供するとともに、それらを社会実装していくための支援や制度整備に取り組んでいる。
また、IT利活用のこうした新たな潮流における人材のあり方についても、独創的なアイデアと技術を持った個人がもっと自由に活躍できるよう、従来のピラミッド型組織から個人が解放されるような、21世紀型の新たな産業組織や社会づくりを検討している。

行政における「第四次産業革命」

 行政におけるIoT・AI・ビッグデータ等の利活用については、紙の電子化といった従来のような取組みではなく、あらゆる端末から行政手続きをできるようにしたり、申請データを行政機関で共有し重複した申請を不要にしたりするなど、行政の合理化に向けた抜本的な検討を行っている。2017年1月には、官民におけるオープンデータ推進の取り組みの一環として、機械可読なデータ提供(法人インフォメーション)もスタートした。その他、国会会議録を対象として過去の関連質疑や論拠等をもとに政策課題の検討に参考となる情報をAIに提示させる、といった実証も予定しており、今後の政府全体でのAI利活用に関する議論につなげていきたい。
 海外の行政におけるIT活用事例としては、手続きのIT化の例として英国のTell Us Onceやエストニアのe-Tax、オープンデータの例として米国のOpowerやClimate Corporationなどがあり、各国政府でもIT化に向けた取り組みが進められている。

サイバーセキュリティ

 サイバーセキュリティについては、政府機関での取組みだけでは不十分で、原発や石油プラントといった重要インフラのセキュリティ強化が非常に重要だ。サイバーセキュリティは企業においてコストであると考えられがちだが、経営者向けガイドラインや制御系ガイドライン、保険の活用などを通じ、サイバー攻撃によるリスクを官民で共有して対策の充実を図るための仕組みづくりに取り組んでいる。
 また、重要インフラ・産業基盤のサイバーセキュリティを担う人材確保に向けて、米国土安全保障省やカーネギーメロン大などと連携しながら、各企業においてセキュリティに関するリーダーシップを取れる人材育成を行うプロジェクトが今春スタートする予定だ。そのほか、情報処理安全確保支援士制度(情確士)を創設し、専門人材を活用できる環境の整備に向けた取組みも行っている。

『IT×バイオテクノロジー』が描く未来

 バイオ分野では、燃料や素材の開発といった従来のバイオテクノロジーと、ビッグデータ・AIの利活用が組み合わさることで、次なる産業構造の改革、スマートセルインダストリーに発展していく可能性があると考えられている。米国や欧州では既に、資源セキュリティの確保やバイオ製品利用の推進などの取組みが進んでいる。日本では、生物データプラットフォームの整備や、遺伝子配列の設計を行うプラントづくりなどが構想されている。バイオ関連のビジネスは、企業においては事業ポートフォリオの一部に過ぎず、大きな投資をしにくい状況であると考えられるが、こうしたバイオ分野の動向をふまえ、サプライサイドの意思決定が機動的にできる組織づくりに向けた支援や、マーケットづくりにも注力していきたい。

IT関連の平成29年度予算案について

 最後にご参考までに、平成29年度経済産業省予算案から、IT関連のものを抜粋してご紹介する。